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湯本 香樹実・著

小説としてはかなりドラマチックでリアルさには欠けますが、とても好きな作品でした。

小学校6年生の主人公とその友人達が、今にも死にそうな一人暮らしのおじいさんを見つけ、そのおじいさんがいつ死ぬかをこっそり見張ろうと計画する…という、なんとも小学生らしい残酷な発想から始まる物語。

死がどういうコトで、どれ程辛く悲しいコトであるかを知らない人間というのは実に無邪気で残酷。
でも知らないというコトはそういうものであって、それが極普通。

だからこの3人の小学生男子が遊びがてら、おじいさんの死の第一発見者になってやろうと思いつくのも、凄く少年的だなぁと思った。


この作品の素晴らしかったところは、心理も風景もとにかく描写が細やかで丁寧だったコト。
登場人物の何気ない動きなどもさり気なく、でもそれが描かれているコトによって作品の風合いがより色濃く出ていてとても良かった。
少年達とおじいさんの会話ではぷっと吹き出してしまうようなコミカルさもあり、それぞれに悩みを抱える少年達の吐く言葉はとても胸に迫った。

子供というのは大人が思っているよりずっと深刻な悩みを抱えている。
大人は決してそれを笑い飛ばしたりしてはいけない。

大人になればどうしても薄れてしまう、だけど絶対忘れてはいけない感情が、この作品を通して甦って来る。

ラストは正直、この流れならそうなるだろう。という感じで納得だけど、そうはなってほしくなかったからちょっと残念だった。

文章から溢れてくる瑞々しさ、二度とは来ない夏の永遠の思い出。
切なく、温かく、やさしく響く良い物語でした。

この小説は10年以上前の作品で、映画化もされているとのコトなので、是非今度映画も観てみたいと思います。

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